志庵 / 稲葉浩志

バンドを組んでいる人のソロアルバムは、そのバンドとは全く違うものになることが多いです。今日紹介する稲葉もファーストソロアルバムの「マグマ」は若干その気があり、B'zのいい意味での明るさはあまり感じられませんでした。しかし「志庵」は違います。誤解を恐れずに言えばB'zのアルバムとして発売されてもおかしくない、エンターテインメント性があふれるアルバムに仕上がっています。ちなみに、B'zは作詞が稲葉、作曲が松本となっているためB'zでは稲葉の作曲した曲は聴くことができません。このアルバムは全て稲葉の作詞作曲の作品となっております。
私がこのアルバムを買うきっかけとなった曲は 7.ファミレス午前3時 です。こんな曲名をつけるのは稲葉しかいないでしょうし、らしいなあと感じます。そして私にとって、ファミレズの午後3時は確かに不思議な空間にも感じるのです。最近はありませんが、大学時代や会社に入った初期の疲れを知らない時期に、終電が無くなるまで飲んだ後、ファミレスで語ったりしたもので、酔いと眠気が入り混じった中で語りあうその空間がものすごく好きだったのです。そんな空間を見事にアコースティックで静かな楽曲で再現してくれています。8.あなたを呼ぶ声は風にさらわれて 9.Here I am!! と2曲続ける、B'zよりもカラッとしたハードロックも心地よい感じです。また 12.とどきますように では稲葉らしい優しい詩の世界を使って、B'zではあまり見せない世界平和をわかりやすい明るいミドルテンポのロックとして聞かせてくれます。ストリングスで始まり、手紙を読んでいるような詩の世界が広がるスロウなナンバー2.LOVE LETTER、 ゆったりとしたピアノのイントロを使った 3.Touch は後半に意外なアップテンポなメロディ展開の楽曲、とリスナーを飽きさせません。聞けば聞くほど味がでる、聞けば聞くほどいろんな発見が見つかる、B'zとはやっぱり違う、ソロならではの面白いアルバムです。
10/24-10/30's song : ファミレス午前3時 / 稲葉浩志
志庵