古道具 中野商店 / 川上弘美

物語はまったりと淡々と語られていきます。ある小さな古道具屋の店員の視点で、そこで起きる小さな出来事を静かに語られていきます。ちょっとした事件は起きますが、あまりに普通にその時は過ぎていくので、その生活(または文章)の中で何が重要で、何が特別で、何が必要なものなのかは気づきません。読んでいても正直「作者は何を言いたいんだろう」とだるささえ感じることもありました。
時間、場所、会話、人々の描写は非常に細かく丁寧に描かれています。それは時に無駄にも感じられるのですが、それはそれであるひとつのシーン。そしてそれらがその“風景”をはっきりとイメージさせてくれます。後半になるとその効果がはっきりと表れ、読者の中のイメージに“時”が流れている事が実感できます。
読み終わった後にじんわりとくる小説でした。やはり全てのシーンは必然でした。そしてなんとなく今の自分の場所を考えてしまった一冊でした。何も無い土曜の午後にゆっくり静かに読むことをオススメします。
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